本日、胎内スキー場で行われた試乗会(石井スポーツ主催)に参加してきました。
ザブ雪でない条件で試乗できたのは、本当に久しぶり。
10時すぎまではバーンの荒れも少なく、板の挙動がよくわかりました。
0930から1230まで、ノンストップで計10本の板に載りました。
以下はその防備録です。(乗った順に書きます。写真はありません。)
(1)DYNASTAR SPEED ZONE 16 Ti (168cm)
今期インターナショナルモデルで販売されているOMEGRASS PRO R21 RACINGの継続モデルです。来期のそれは、サイドウォールにチタンシートが挿入され、トーションが強化されている点が異なります(ただ、ブラインドテストで乗ればその違いはわからないと想像します)。
日本でもFRUIDプレート板は今期販売されているのですが、R21プレート版は未発売。
ようやくR21プレート板のこの機種が日本でも発売されるとあり、試乗を最も楽しみにしていたモデル。
この板の工場出荷時のエッジ角は88/0.5なのですが、そのままの状態だったと思います。つまり、ベースエッジのビベルが0.5。
そのせいかエッジが食い込みすぎ、スキーをさせてもらえませんでした(横滑りがスムーズにできなかったくらい)。
なので、評価は保留。
ただ、板の挙動はロシのデモαと限りなく同じ感覚なので、ビベルさえ適切に付いていればいい感じで滑走できたものと考えています。
手であおった感じでは、わずかにデモαよりこっちの方が返りがクイックのような気がしました。
質量は、カタログから計算すると、SPX12付きの場合で3310g(168cm)。
SPX15相当のAXIAL3 150が付いているデモαにAXIAL3 120を付けると3315gとなるので、まあ性能はほぼ同じだと言えるでしょう。
(サイドカーブはディナスターが121-67-105、ロシが122-68-104と異なるので、同じ板ではありません。味付けは似通っていますが、設計は別です。)
尚、167のデモαと168のこの板の長さを比べてみたところ、やはりというか、全く同じでした(実寸165.5くらい。ちなみに市販の165のSL板の実寸はほとんどが164.5です。)
同じ金型を使っているはずのデモαソフトとデモβが、前者は167後者は166になっていたりとか、FIS SL板のサイドカーブがトップ幅120だったり119だったりとか、最近のロシニョール&ディナスターの板のサイズ表記はおかしな点が多いので、こういった数値的な管理はきちんとして欲しいものです。
(2)FISCHER RC4 The CURV (178cm)
ディメンションは120-74-104, R18。
ぼくがおととしから乗っているディナスターのCR74 PRO(124-74-106)という、R20プレート付きの板と同じコンセプトの板と思われます。
新型のプレートは高さはかなり低いものの、アルミ製なのでトーションがかなり強くなります。VISTプレートを彷彿とさせる外観です。
板の表面にもクロス状にカーボンが張り巡らされており、トーションを上げるのに一役買っているそうです。
カタログを見ると、板とプレートの合計が2500gとあるので、かなり重量感はあります。
しかしながら手にとってあおってみると、決して硬くはありません。
粘りがあり、好きなタイプのフレックス。期待が高まります。
ところがところが・・・
この板に関してはこないだ軽井沢の試乗会で使ったばかりで、ビベルも1度付いているとメーカーの担当者の方はおっしゃっていましたが、それでもよほど板のトーションが上記の理由で強いのか、エッジグリップ過多でした。
あと、チューンの問題か、グリップ感が左右均一ではなかったのでいい感触はありませんでした。
オガサカのGRプレート、ロシニョールのR21 WCプレートなど、アルミがインサートされたプレートは、一般ゲレンデでは必要ないとつくづく思いました。
スパルタンな板なので、基本的にはアスリート向きだと思います。
(3)SALOMON X-RACE SW + Z12 Speed (165cm)
X-RACEシリーズはベースのプレートの高さが低くなったので、ある程度軽量化されたようです。ビンディングの質量は変更ありませんが、手に取ってみたら特に重く感じなかったので試乗してみました。
手であおった感じではフレックスも程よく、サンドイッチ構造になったことに起因する返りの質感も好感触。
ところが、この板もまとも滑れませんでした。やはりビベル角は0.5なのかな?
この日乗った中で一番エッジがかみ(横滑りさえ不可能)、肝心の小回りの性能を確かめることができませんでした。
きちんとチューンナップされた板で、もう一度乗ってみたいです。
(4)NORDICA SPITFIRE PRO (168cm)
ディメンションは122-70-102, R15。
フルモデルチェンジですね、スペックから判断すると。
好みのサイドカーブだったし、フレックス感も適度だったので乗ってみました。
スペック的にはオールラウンド用に良さそうです。
しかしながら、テール側が食い込みすぎる嫌いがあり、ターン後半まっすぐ走りやすい。
もう少しテールのしなりが出やすくなればターン弧の自在性が増すと思うのですが、イマイチぎくしゃくした操作性です。
この板も、工場出荷時のままでは?
試乗会シーズン早期に開催される試乗会では、工場出荷時のまま持ち込まれる板が圧倒的に多いのが残念。
きちんとチューンナップされた板だったら、乗り味は変わるかもしれません。
基本的にはドライ系の乗り味。しっとり感は希薄でした。
(5)VOLKL PLATINUM SW (173cm)
昨年苗場の試乗会で初めてSWの166cmに乗りましたが、ザブ雪で性能がわからずじまい。
サイズ的にもより興味のある173でトライしましたが、イマイチ安定感に欠ける乗り味。
幅広でそこそこ重量感もあるのですが、それが安心感につながっていません。
なんていうか、つかみどころのない乗り味。
やはりテール側にもロッカーが入っていることがマイナスに作用しているのでしょう。
ただ、板の挙動はわかりやすく、リフト1本目から性能を引き出して乗ることは可能かと。
オールラウンド機として、よく言えば中庸のモデルと言えると思います。
(6)OGASAKA TC-SH (165cm)
試乗会でオガサカの板は滅多に履きません。
なのでその年ごとの同社の傾向は細かく把握していないのですが、他社に比べるとグリップ力に欠けると思います。
プレートがしっかりしているので足場は作れます。そのことによる安定感はあるのですが、
あとで述べるKS-LSに比べ、中~大回りでの高速安定性は、長さが5cm短いことを考慮してもかなり劣りました。
エッジが食い込みすぎる板(横滑りがまともにできない板)よりはマシですが、もう少し板のトーションはあった方がいいと思います。
また、この板のサイドカーブのバランス、つまりトップ幅からテール幅を引いたときの数値は13になりますが、ここ数年そのバランスは世界的に見ると、15前後から18前後へとどんどん高まってきています。
つまり、一昔前のサイドカーブのバランス。
そういった先入観なくしても、トップ側の幅は2~3mmワイドな方が、或いはテール幅が2mmくらい狭い方がオートマチック性が増すのにな、と感じました。
スキーセンターの位置も今期のそれより中央にやや移動させたとのことですが、個人的には従来の位置~やや後ろ目~の方が好みです。
(7)FISCHER Progressor F19 Ti (170cm)
この機種を履くのは初めて。今期のものよりやや軽量化されたそうですが、張りのあるフレックス感は変わりません。
フレックスにあまり粘りがないので、ちょっとじゃじゃ馬的なところがあります。
足下の安定性がもう少し欲しいところ。
ビンディングやプレートは軽ければいいというものではなく、ある程度の重量があった方がいい意味での安定感に結びつくこともあります。
例えば、この板のプレートの重量があと150~200g重かったら、操作性がかなり改善されるのではないでしょうか。
(8)ROSSIGNOL デモαソフト (167cm)
来期はコスメ以外の変更点はない模様。
(厳密に言えば、FRUID Xプレートを板に固定しているビス穴の間隔が横に広くなり、縦に狭くなるなどのマイナーチェンジが施されていますが。)
この時点で、この日履いた中で一番ツボにはまった板となりました。
やや足下が軽い点を除けば、欠点が見つかりません。
ここで、プレートの話。
アルミがインサートされているR21 WC(FISモデルやGS MASTERなどに搭載)に比べると、R21 RACINGの方はトーションがかなりマイルドになります(プレート単品の質量も、WCに比べると約80g軽量)。
質量もTPXやFRUIDプレート仕様に比べて約50~60g重いだけですし、見た目が重厚だからと言って(硬質樹脂製です、アルミではありません)身構える必要はありません。
テクニカルレベル以上の人には、デモαソフトよりデモαをお勧めします。
足下の接雪感やグリップ力が全然違います。
各社のレーシングプレートの中では、R21 RACINGプレートはかなりやさしい部類に入るのではないでしょうか。
ただし、デモαは重いビンディング・AXIAL3 150(1425g)が付けられているので、重量感があります。石井のGIEGERの数値によると、167で3480g。
軽快さを求める場合や、コブでもお使いになる方はDIN3.5-12までの、AXIAL3 120(1260g)ビンディングを組み合わせるといいです。165g軽くなります。
展示会での予約購入でないと、その組み合わせは買えませんが。
またその場合は、最初からAXIAL3 120相当のSPX12ビンディングが付いているディナスターのSpeed Zone 16 Tiにするという手もあります。
個人的には、167cmを使う場合はAXIAL3 150を、172cmでオールラウンドに使う場合はAXIAL3 120を付けたいと思います。
(9)OGASAKA KS-LS (170cm)
ディメンションは119-70-98, R16。
トップ幅からテール幅を引いた数値が20となり、オガサカ史上最も高い数値になるのがこの板。
今期のKS-RVが18でしたが、1年でこの数値を更新する板が現れました。
乗り味は全然異なるけど、ロシのデモαや後述のフォルクルGDと並び、この日最も気に入った板のひとつです。
グリップ力不足は相変わらずですが、ズレ方がトップからテールまで均一なのでコントロールしやすいです。
FL585プレートの安定感頼みというところはありますが、板の挙動は過去試乗してきた同社の板の中では最もクセがないように感じられました。サイドカーブの前後バランスが自分好みというせいもありますが。
高速安定性も申し分なく、オールラウンドモデルとして死角がありません。
ツインキール構造独特のレスポンスの良さも印象的でした。
(10)VOLKL PLATINUM GD (175cm)
昨シーズン、インターナショナル版ですが、同じサイズのこの板を所有していました。
バーンの荒れがピークにさしかかった頃に乗りましたが、全く不安感を覚えることなく自在にターン弧を刻むことができました。やっぱりこの板、いいわあ。
先のオガサカKS-LSとはまた違った乗り味。
グリップ力の精緻さでは、他の板の追随を許しません。
雪面との力のやりとりが緻密にできます。
これとよく似たタイプのグリップ感を有する板はストックリーでしょうか。
今期のものよりプレート部が若干軽量化が図られたとのことですが、高速安定性はスポイルされていません。
先のオガサカは板が常にずれを伴うので、キレ感のある深回りはしにくいのですが、こちらはどんなターンサイズもフルカービングでいけます。
つまり、より細いシュプールを刻むことができるということです。
また、この日の正午(とっくに雪は腐っている)に乗ったにも関わらず、この日乗った板の中で一番滑走性が良かったです。
他社の板のソールにどのような素材が使われているのかは不明ですが、フォルクルのトップ機種にはP-TEX4500が採用されているとカタログに明記されています。
この性能によるものなのか、はたまたストラクチャーの深さが適切だったからなのか、原因はわかりませんが。ちょっとこれはオドロキでした。
昨年苗場の試乗会でも、そういえば同じ経験をしましたっけ。
高温のため早くにザブ雪になったあの試乗会で、しかも正午前に履いたにも関わらず異常に走る板に遭遇しました。
ストックリーのLASER SLです。
う~ん、やっぱりストラクチャーのパターンと深さの組み合わせによるものなのでしょうか?
エッジの細さも関係しているのかもしれません。
※番外編
この日持って行った自分の板(DYNASTAR CR74 PRO 172cm, 124-74-106, R15, 2013-14モデル)を、試乗会の前後に乗りました。
(下の写真は2015-16モデル)

この板のFRUIDプレート板は昨年まで日本でも販売されていましたが、メーカーでは全然メディアに露出させていないため(もちろん試乗会でもお目にかかることはできず)、ゲレンデで見かけることはまずないと思います。
ぼくの板はR20プレートの付いたインターナショナルモデル。
R20/R21プレートには、普通はトゥピースとヒールピースが連結されたタイプのビンディングがセット販売されることが多いです。
しかしながら、ぼくの板や、今期のロシニョール・GS MASTERのように、セパレートタイプのビンディングがセット販売されることもあります。
板のしなりはセパレートタイプのそれの方が出やすくなります。
また、重量も当然のことながらセパレートタイプのそれを付けた方が軽くなります。
ぼくのCR74 PRO 172の重量は3.4kg。かなりあります(ヒールピースが旧型なので重い)。
張りもGS MASTERと同じくらいあり、幅広のレーシング板といった風情。
返りも意外とクイックで、硬派な板です。
この日で使用日数が30数日になるこの板、使い慣れているせいもありますが、フォルクルGD同様、操作性と高速安定性が高い次元でバランスしていると思いました。
隠れた名器です。
欲を言えばもう2~3mm全体的にスリムだといいのですが、もう少し現役生活を続けてもらうことにします。
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