トキナーAT-X 11-20 F2.8 PRO DXを試す
キャノンのAPS-C機を使い星景写真や星野写真を撮っている自分にとって、使える超広角レンズ~35mm換算で18-20mmぐらいになるもの~をずっと探し続けてきました。
主な各メーカーの超広角ズームは全部試してきましたが、どれも周辺部が激しく流れます。そんなかで、シグマの8-16mm F4.5/5.6 DC HSMは突出した光学性能を誇るのですが、いかんせんF値が暗すぎます。
唯一、シグマの18-35mm F1.8が満足できる性能ですが、ぼくが本当に欲しているのは12-13mmの画角。広角というより、超広角と称するところの焦点距離です。
一方、単焦点では幾つか使えるレンズがあります。
例えば、SAMYANGの10mm F2.8と、SIGMAの10mm F2.8 FISHEYE。
あと、キャノンの14mm F2.8L IIや、SAMYANGの16mm F2.0など。
サムヤンの10mm以外は全部使ってきましたが、これらのレンズはOK。
しかし、単焦点においても、その中間の焦点距離、12mmのレンズはありません(SAMYANGがミラーレス機用に12mm F2.8をラインナップしていますが)。
35mm換算で20mmとなる画角は、星景だけでなく、風景や花の広角マクロ写真で、個人的にもっともしっくりくる画角なのです。
トキナーから表題のレンズが発売されたのは今年の2月下旬でしたが、当初は11-16mm F2.8のテレ側を伸ばして改良したとのメーカーのコメントに、それじゃあ基本的な光学系は変わっていないっぽいからダメかな、と気にも留めませんでした。
しかし、最近同社のHPで、小河俊哉氏の作例を見る機会があり、そこで衝撃を受けたのです。
そこには最後の方に3枚の星景写真が載っているのですが、そのうちの2枚の周辺部の星像が、ズームレンズとは思えないほどいいのです。
F2.8でも周辺部の星像は個人的には合格点を与えられます。
次に、海外のレンズ比較サイトでこのレンズのテスト記事がないか探してみたのですが、残念ながらこのレンズのレビューは見つけることができませんでした。
しかし、国内のサイト~GANREF~にテスト記事がありました。
そして、解像度がやはり絞り開放から優れていることを確認したのです。
AT-X 116 PRO DX Ⅱとはまるで別物。
広角端11mmでの色収差はやや多めでしたが、まあ許容範囲。
現在市販されているAPS-C専用超広角ズームの中では、間違いなく一番優秀な光学性能を持つことを、これらのデータが証明していました。
結果的に、GANREFのテスト記事に背中を押されて購入に至ったわけです。
フルサイズ機ならタムロンの15-30mm F2.8 VCという最終兵器?がありますが、山登りにも連れて行く用途を考えると、1.2kgという重量にはやはり引いてしまいます。
キャノンのフルサイズ機は液晶モニターが固定式なのもマイナス要素。
6Dなどに装着するとかなりフロントヘビーになり、バランスも悪そう。
三脚も一回り頑丈なやつにしないと運用できません。
他方、ミラーレス機なら7-14mm F2.8を発表したオリンパスに魅力を感じます。
軽量なのがいいですね。ミラーレス機はボックスによるケラレが構造的に発生しない点もプラス要素。
オリンパスは他にも垂涎のレンズをいくつも取りそろえているし、高感度画質も非常にいい。サードパーティー勢も、マイクロフォーサーズマウントで天体用に適した広角系のレンズを昨年あたりから出してきています。今、もっとも熱いマウントなのです。
しかし、フジにせよオリンパスにせよ、天体用のフィルター換装はできません。
赤い散光星雲は赤く描写したい、ただそれだけの理由なのですが、未だにキャノンの60Daを愛用している自分です。
さて、SIGMA RUMORSという海外のサイトに、シグマのレンズのロードマップが載っていました。
そこにAPS-C機用の12-24mm F2.8があります。 もちろんART LINEのレンズです。
しかし、いつ出るかはわかりませんし、取りあえずはトキナーと付き合っていくことにした次第。
EOS60Da + トキナー AT-X 11-20 F2.8 PRO DX (12mm・追尾撮影)
ISO1000, F2.8, 20秒 (Photoshopで現像・撮って出し)
上の写真をレタッチしたもの(参考までに)。
29日夜、早速近くの丘(新発田市二王子山麓)でテストしてきました。
11mm, 12mm, 16mmの順に、それぞれF2.8, F3.2, F3.5, F4.0で撮り比べ。
*11mmの開放では、やや周辺減光が目立つ。しかし、しれ以外の焦点距離ではそれほど目立たない。
*色収差はやはり11mmのF2.8の周辺部でもっとも目立ち、焦点距離が長くなるに従って色収差は改善されていく。しかし、11mmの開放でも、個人的には許容範囲。
*解像度はF2.8でも中央部は充分シャープ。やはり11mよりは16mmの方が周辺部の解像度が高い。(周辺部の星像は、おおむねトキナーのサイトでの小河氏の作例~一番下の写真~と同じです。)
*11mmと12mmとでは解像度がかなり違う印象。周辺減光や色収差の量も含め、できれば12mmを使いたい。
*MFリングのトルクがやや軽めで、安っぽい触感。
*PHOTOSHOPのCamera RAWにこのレンズのプロファイルはない。できれば簡易フラットでもいいので、フラット処理を行えばもっと画像のクオリティーは上がるだろう。(上記の写真はダーク・フラット補正は一切していない。)
最後に、サムヤンの16mm F2.0と、このレンズの16mm側とで比較撮影をしてみました。
絞りはF2.8とF4の2通りで試しました。
*F2.8の比較では、ほんの少しトキナーが明るく写る。コントラストも高い。
*周辺部の解像度や星像はサムヤンが上回る。しかし、その差はごくわずか。
*色収差も、わずかだがサムヤンが少ない。
色収差とシャープネスならサムヤンがやや上なのですが、コントラスはトキナーが上なので、総合的に見ると互角でしょうか。
個体差なのか、ぼくのサムヤン16mmは左上隅に片ぼけが見られますが、その点、トキナーのこのレンズは四隅が一定です。
総じて(20mmは試していませんが)、どの焦点距離においてもトキナーのこのレンズは絞り開放から安定した描写を見せ、絞っていっても劇的に画質が上がるわけではありません。
おいしいところは、絞りで言ったらF3.5、焦点距離で言ったら12~14mmでしょうか。
18mmになると、シグマの18-35mm F1.8という優れたレンズが存在するので、このレンズはそれより広い画角で重宝しそうです。
EOS60Da + SAMYANG 16mm F2.0 (固定撮影)
ISO1000, F3.2, 25秒
テストの後、以前から気になっていた地形をインスペクション。
日照り続きにも関わらず、水田の周囲の用水路の水量は豊富。もちろんコンクリートで固められていません。
これならホタルがいるかも。方角的も天の川がいい感じで視界に入るし、ホタル星景によさそうです。
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