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2012年5月30日 (水)

星景写真の写し方

最近いろいろな方から「どうしたらああいうふうに写せるんですか?」と聞かれるので、僕なりのノウハウをまとめてみました(初心者向けです)。

(1)カメラのボディー
 デジタル一眼レフカメラが必須です。ミラーレス一眼でも撮れますが、画質的には前者に及びません。ただし、オリンパスのOM-D EM-5は著しく高感度特性が改善されており、充分使えます。メーカーはキャノンがお勧め。星を写すと、カメラやレンズのあらが非常によくわかります。究極の光学テストをしているようなものですから。天体写真をやる人のほとんどがキャノンユーザーですが、そこにはそれなりの理由があるのです。
高いフルサイズ機を買う必要はなく、Kiss X5で構いません。ただし、世代が古くなるごとにノイズ量が増えます。個人的には、X5や40D以降からのカメラをお勧めします。

(2)レンズ
 開放F値が2.8のもの、もしくはそれより明るいものが必須。できれば単焦点が望ましい。
広角レンズはどんなレンズでも周辺部の星は大なり小なり楕円形や線状に写ってしまいます。特にズームレンズではそう。ただし、明るい単焦点広角レンズは高いです。そこがネック。
地上風景と星を一緒に絡め撮る星景写真では、カメラを三脚に固定してバルブモードでたっぷり露出をかけるやり方(これだと、星は点にはならず、放射線状に写ります)、赤道儀を使ってカメラを自動的に動かすやり方(これだと逆に地上風景が流れてしまうので、星が点に写る代わりに地上風景はぼんやりとしてしまいます)があります。
難しいのは後者。ここ数年のデジタルカメラのノイズ特性の進歩のおかげで、やっと地上風景と点としての星を同じ構図に収めることができるようになりました。
1分までの露出時間でしたら、赤道儀で追尾させても地上風景の流れがほとんど気にならないレベルに収まります(もっとも、感じ方には個人差がありますが)。2分だと個人的にはNGです。
ISO1600でF2.8で1分。これが暗い空でのぼくの基準というか、スタンダードです。
(絞りがF4のレンズだと、露出時間を2分に延ばすか、ISOを3200に上げるかしなければなりません。しかし、APS-C機ではISO1600以上はノイズがひどくなり、画質のクオリティーは大幅に下がります。マイナス面を覚悟すれば撮れないことはないのですが。)
地上風景を含めずに、空だけを視野に入れて天の川を撮るのであれば、開放F値が2.8より暗いものでも構いません。ズームレンズでもオーケー。赤道儀を使うという前提であれば、地上風景の流れを考慮する必要がないので何分でもたっぷりと露出をかけてあげることができるからです。

(3)赤道儀
 例えば10mmの超広角レンズを使うなら、赤道儀を使わなくとも15秒程度でしたら星が点に写ってくれます。しかし、50mmの標準レンズを使うなら、5秒でも流れが目立ってしまいます。
どんな焦点距離にせよ、星を点として写すことにこだわるなら、やはり赤道儀は必要です。その場合、大きく高価なものは必要なく、ポータブル赤道儀と呼ばれる安価なもので結構です。昨年秋にビクセンから発売されたポラリエや、アイベルのCD-1などが最も安く、3~4万で買えます。
 繰り返しますが、星がある程度流れてもいいのなら、赤道儀は用意する必要はありません。しかし、その場合でもバルブモードで1分以上露出をかけることがあるので、リモコンは必要。闇夜でないとき、街明かりの影響がある程度ある場合は20-30秒程度で適正露出になることもあり、その場合はマニュアルモードで撮れるのでリモコンは必要ありません(多くのカメラでは30秒がシャッタースピードの上限となっています。それ以上はBモードに設定します。コンデジはBモードを備えていないので、星空を写すには不適当です。ISOが同じ1600でも、ノイズ量が決定的に違います。なので画質的にも著しく劣りますから星を写す用途には使えません。)

(4)三脚
 ポータブル赤道儀を使う場合は最低限パイプ径が28mmのもの、固定撮影の場合は25mmのものが必要。カーボンでなくとも構いません。耐荷重はあまり関係ありません。
逆に、カーボン三脚は軽量であるが故に、地面がコンクリートでなくベアグランドであったりする場合には不安定になることがあるので、重しをのせたりして使うあことがあります。風が吹いていれば、軽ければ軽いほど風の影響を受けやすくもなりますし。

(4)画像処理
 天体写真や星景写真を美しく魅せるには、フォトレタッチソフトの習熟が欠かせません。
どんなに高価な機材を使っても、撮影直後の画像は、それはそれは地味なのです。
しかし、一見モノクロに近い地味な画像には多くの情報が隠されています。
Photoshopや、カメラを買ったときに付いてきた純正のRAW現像ソフトによる調整をへて、初めて色やディテールが現れるのです。
 フォトレタッチソフトを使う前に、カメラ側での画質のセッティングは必ずRAWにしてください。JPEGでも撮れないことはありませんが、極端にコントラストを上げることの多いこの分野の画像処理には耐えられないことが多く、階調が破綻するためです。
JPEGは8ビット、RAWは14ビット(オリンパスや一部の入門機種は12ビット)、コアな天体写真家が使う冷却CCDは16ビット。
ビット数が多ければ多いほどひとつひとつの画素に含まれる情報量は増え、強めの強調処理を施しても絵が破綻しにくくなります。また、星の色に深みが出るようになります。
処理の詳細については本当にケースバイケースで、長くなるのでここでは省きますが、カメラ側の設定でもうひとつ注記します。
コントラスや彩度、シャープネスを調整する項目がありますが、これらは全てマイナス側(最低レベル)にしておいてください。これも、少しでも多くの情報を記録させるためです。
例えば晴天時の昼間、公園でバラの写真を撮ったとします。強い反射を受けて白く飛んでしまった部分は、あとで画像処理を加えても失われた情報を復元することができないのです。逆に露出不足でとても暗く写った場合、それはオーケー。画像処理で適正な色彩、明度に戻してあげることが可能です。
星景写真でも、基本的には同じ考え方。好みの色合いや明るさ、輪郭の線の太さは全て最終処理時、つまりフォトレタッチをするときに行います。
Photoshopは高価なソフトですが、利点はたくさんあります。
例えばマスク処理ができること。
田んぼや林をバックに天の川を撮ったぼくの写真では、地上風景部分と星空部分を分けて画像処理しています。
Photoshopを使うと林の複雑な輪郭でも正確に選択することができるので、画像処理の際の自由度が飛躍的に増します。
あと、撮影時に地上風景の一部にLEDライトやストロボを照射する人がいますが、技術的に非常に難しくはあるものの、それだと複雑な処理をしなくても印象的な絵を作ることができます。
個人的にはその場の光だけで写したいのでそのようなテクニックは今は用いていませんが、そういうやり方もあるのだということは覚えておいて下さい。

(5)下準備
 天体写真を趣味とする人は、ステラナビゲーター(他のブランドもありますが)という天体シュミレーションソフトも持っています。ここには地形データも収録されているので、任意の場所の緯度と経度を入力してやると、その場所の地形が眼前に現れます。
例えば、天の川を主役にして撮りたい場合は、このソフトを使うことにより、その場所でも天の川の見え方を計算できるのです。
場所の緯度や経度は、手っ取り早いところではグーグルアースで調べることができます。
こういったソフトを駆使し、予め撮りたい構図を決めてから現場へ向かうことが多いです。
もちろん何の準備もせずに、行き当たりばったりで現場を訪れることもありますが、天の川を絡めた絵を撮るときは、ほとんどの場合、事前のシュミレーションを行うようにしています。
また、最近はスマホやiPhoneのアプリで、天文シュミレーションソフトがあります。
それらも充分使えますので、試してみるとよいでしょう(ぼくはドコモなので使ったことはないですが)。

Img_4394p

EOS60D改 + SIGMA FISHEYE 10mm F2.8 DC HSM
ISO1600, F2.8, 1分 (追尾撮影)

これは先日、二王子神社境内で撮った一コマですが、天の川の中心部が茶色っぽく写っていますよね。これについて補足します。
使用したカメラ名をみてください、EOS60D改となっていますよね。
この改は改造の改。天文ショップでフィルター換装をしていることを意味します。
普通のデジカメは赤外線の波長をカットするフィルターが撮影素子の前に付いています。
一方、星はこの波長の電磁波を発しているものが多く、それらの天体の本来の色を引き出すには赤外線カットフィルターをはずしてあげることが必要になってくるのです。
以上、思い切り簡単にはしょって説明しましたが、こういうことなのです。
ただし、星景写真の場合には必ずしも改造する必要はありません。
白鳥座の真ん中のあたりと、射手座を中心とする天の川の一番幅のあるあたりで、わずかに赤っぽく写る部分の面積と赤の彩度が上がるだけです。(天の川そのものも、やや暖色系に写ります。)
逆に、改造機の場合はカラーバランスを取ることが難しくなるので、画像処理の難易度が倍増します。ですから、望遠レンズを使って、散光星雲をカラフルに写したいというのでなければ、特に改造する必要はありません。

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