追憶の三面・アチヤ平の空
ぼくは高校2年生の時に、父親のバイクを借りて離村寸前の三面集落を訪れたことがあります。
その頃から山登りを始めたのですが、渓流釣りにはまっていたせいもあり、自然と朝日連峰の登山口に位置する三面集落の存在を知るに至りました。
そこはまさに桃源郷そのものでした。過去多くの秘境と呼ばれる村を訪れましたが、ここが桃源郷度No.1ですね。今となってはいい思い出です。
今は奥三面ダムの底に没してしまった三面集落ですが、平家の落人が住み着く以前から人が住んでいたことが確認されています。
そのことを知ったのは、沼澤茂美さんの著書「にいがた星紀行」ででした。
158P、奥三面・縄文の空の章によると、2万5千年も前に人が住んでいたことがアチヤ平のストーンサークルから確認されたようです。
最近この本を読み直し、165Pにある写真に魅せられました。歳差運動により、当時は樽山と鷲の巣山の間に、4月中旬宵の頃2時間だけですが南十字星が見えていたとのこと。
昨年一度下見し、秋にはダムサイト脇の駐車場で天体写真を撮ったぼくですが、くだんのアチヤ平近くの三面メモリアルパークで無性に星を見たくなり、6月3日の夜、奥三面へと車を走らせました。
早めに着いたので、下見を兼ねて末沢橋まで行ったのですが、ここまで来ると東の視界が開け、撮影地としても面白いと感じました。
その橋より一つ手前、釜ノ淵橋がアチヤ平の上に架かる橋です。
万感迫るものがありました。と同時に、あのストーンサークルだけでなく民俗学的にも貴重な財産であるはずの三面集落をダムの底に沈めてまで作った巨大なコンクリートの塊に悲しみを禁じ得なくなり、そこでの写真は撮らずじまい。
三面ここに眠る、との石碑が建つメモリアルパークまで引き返し、ここで月が昇ってくる23時すぎまで写真を撮った次第です。
残念ながら全体にもやっており、空の透明度は最近のワーストに入ります。
もう一度アンタレスをじっくり撮ろうと決めていたので、光害カットフィルターのP2を装着し、過去最高の11枚を撮りました。
翌日画像処理をしてみて、やはり透明度のよい空で撮った写真の方が多少コンポジット枚数で劣ってもきれいに発色するということ。
これは10枚のコンポですが、P2フィルターの威力もむなしく、また2時間に及ぶフォトショップとの格闘も及ばず、前日に飯豊の山中で撮った写真を上回る出来にはなりませんでした。
この日は22時を過ぎると早くも薄雲が流れ始め、23時には天頂以外曇ってしまいました。
最後に、大慌てでもう一つ撮ろうと思っていた白鳥座の網状星雲にレンズを向けたのですが、1枚撮ったところでギブアップ。まったく白鳥座が視認できないほどに雲に覆われてしまいました。
これがその唯一撮った画像(1枚撮り)。
レンズは今日も200mm1本。実はこの被写体を撮るのは初めてなので、どのくらいの大きさに写るかわからず、真ん中に収めるために3枚ほど試写を繰り返しました。
こうしてみると、300mmが丁度良さそうですね。
あの空にしては意外とよく写ってくれているので、次回よい条件の時に再トライしてみようと思います。
星野写真を1枚も撮れなかったのが悔やまれます。
でも、ここまでの運転もしんどいし(くねくね道が15km続きます)、もう来ることはないかもしれません。そっと自分の胸の奥の引き出しに、記憶をしまっておくことにします。
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こんばんは、良い仕事をされていますね。とっても綺麗です。それを撮りたくて被りの出ないところを模索して居たのですが、今日は行けなくなって残念です。女房との約束を忘れていました。財務相の言うことは利いておかないといけません。
投稿: けんちゃ | 2010年6月 6日 (日) 01時08分
けんちゃさん、ありがとうございます。ぼくは独り者ですから自由が利きます。行きたいときに行けるのは利点です。でも、そろそろ財務省?が欲しくなってきたりして。なんだかんだいって、山形のT峠がこの辺では一番でしょうかね。いつかチリかペルーの空を見てみたいです。
投稿: 佐藤俊彦 | 2010年6月 6日 (日) 02時07分